ご相談の多い
疾患
 

準備と方針

不妊について初めてご相談いただく時に、体質や月経状態等に関する問診以外に、必ずお聞きすることがあります。

基礎体温表を付けているかどうか。
婦人科での診察、詳しい検査等を受けているか。

です。
基礎体温表は婦人科で治療を受ける際にも必ず必要になる物です。基礎体温表により、ホルモンの状態、排卵に必要な「気」の力の具合などが見えてきます。不妊以外の婦人科系のお悩みをお持ちの方も、できれば付けてみてください。

漢方薬で不妊治療を希望される方の中には、婦人科を受診することに抵抗を感じており、まずは漢方薬で体質改善を、とお考えの方も少なくありません。しかし、妊娠を妨げる病気、器質的な問題などが潜んでいる場合、それを無視して漢方治療のみを受けることは有効だとは言えません。

婦人科で何か問題が見つかった場合、積極的に治療を受けていただいています。漢方薬は、婦人科での治療を邪魔することはありませんし、むしろ婦人科での治療を支える役割をします。

ホルモン療法、外科的な治療、体外受精など、西洋医学な治療を生かす為には、体が妊娠を十分に受け入れられ、妊娠を維持できるだけの準備を整えておかなければなりません。その為に、普段からご自身の生活状態や健康状態にしっかり目を向け、婦人科での検査等を十分に受けられて、不妊治療に望まれることをお勧めします。

これらの情報を踏まえて、詳しく問診し、体質に合った漢方薬をご服用いただきます。
子宮筋腫子宮内膜症排卵異常卵管通過障害高プロラクチン血症など、何らかの問題がある場合には、その病態の程度を加味しながら、漢方薬を組み合わせていきます。

男性に原因がある場合の殆どが造精機能障害です。基本的には体質に合った補腎薬を選び、ご服用いただきます。非常に疲れやすい、ストレスが強いなど普段の体質に偏った面があれば、それらを積極的に改善することをお勧めする場合もあります。健康食品では亜鉛製剤を多く用います。

周期療法

月経周期を4期に分け、その時期に応じた理想的な体調を整えるために漢方薬を服用する方法です。
ずっと同じお薬を服用するわけではありませんので、きちんと基礎体温を付けながら、決められたお薬をそのつど飲んでいただく必要がありますが、身体を整える意味で非常に有効な方法です。

月経期 *月経開始後から3〜7日

子宮内膜と月経血をスムーズに排出させ、子宮内部をきれいにする。
漢方薬は活血化お薬・理気薬
例)冠元顆粒、田七人参、桂枝茯苓丸、星火逍遥丸など

・卵胞期(低温期)*月経後1〜12日目
女性ホルモンの分泌を促進し、子宮内膜の増殖と成熟卵胞の生育を助ける。
漢方薬は補血薬、補陰薬、補腎薬など
例)当帰養血精、六味丸、杞菊妙見丸など
・排卵期*月経後12〜16日目
排卵をスムーズにする。
漢方薬は理気・活血薬
例)冠元顆粒、星火逍遥丸など
・黄体期(高温期)*月経後16〜28日目
黄体ホルモンの分泌を高めて子宮内膜が肥厚するのを助け、子宮と身体を温めることにより、受精卵が子宮内膜に着床し、妊娠を継続出来る為の準備をする。
漢方薬は補腎・補陽・補血薬
例)当帰養血精、海馬補腎丸、参茸補血丸など
上記のように漢方薬の飲み分けをしていただくことが基本となります。
更に体質の調整が必要と見られる時には、上記の基本に体質改善のお薬をプラスします。
婦人科での治療を受けていても、身体の待ち受け状態が整っていないと、十分にその効果を発揮することが出来ません。ぜひ、取り入れていただきたい方法です。

定期的な月経がない方、胃腸が非常に虚弱で身体の栄養状態が悪い方など、周期療法以前に根本の体質を整えることが必要だと見られる場合には、まず身体のベース作りをしてから、周期療法に入る場合もあります。
不妊の原因になりやすい主な症状

・子宮内膜症
子宮内膜と同様な組織が、子宮内部以外の場所、卵管や卵巣周辺、子宮外壁、腹膜などで増殖し、月経周期に伴って増殖や出血を繰り返す病気です。子宮内部と違って膣の様な出口がないので、血液がその場に溜まって、炎症を起こしてしまいます。
卵巣の中で内膜症が発症し、暗黒色の血液様の内容物を含むものを卵巣チョコレート膿腫と呼びます。

原因はまだ明確には分かっていませんが、「月経血が卵管を通って腹腔内に逆流し、内膜細胞がそこで定着し増えるのではないか」、「生態調節システム(免疫・ホルモン・神経など)のアンバランスが原因ではないか」などと言われています。
近年では、「腹腔内に逆流した月経血にアレルギー反応を起こしているのではないか」と言う説も出ており注目されています。

自覚的には月経血が多くなり、月経痛が激しくなる方が多いです。
骨盤内の臓器に癒着が生じることが多く、そのひきつれの為に月経時以外にも下腹部痛を感じる方が多く見られます。

子宮内膜症自体が不妊の原因となるわけではありませんが、癒着によって卵管の閉塞や運動障害を起こしやすく、不妊の一因となることはよくあります。
漢方薬治療
漢方では、子宮内膜の組織増殖を「お血」と捕らえ、活血化お薬を中心に用います。
出血が多い場合には、田七人参やキュウ帰膠艾湯など、止血作用のあるお薬を用います。
またアレルギー反応との観点から、免疫系を整えるものを取り入れて効果を上げる場合もあります。
普段から生体調節システムを整える為に、基本的に身体を冷やさない、過度なストレスをためないなど血流を悪くする原因を取り除く心がけが非常に重要です。

・子宮筋腫
子宮筋腫は子宮の筋肉にできるこぶのようなもので、良性の腫瘍です。成人女性の3〜4人に1人は持っていると言われるほどポピュラーな腫瘍で、閉経を過ぎるあたりから徐々に減ります。
原因はまだはっきり分かっていませんが、女性ホルモンのエストロゲンの影響が考えられています。
筋腫は普通ゆっくりと時間をかけて成長しますが、稀には非常に短時間で大きくなることや、筋腫だと思っていたら悪性の「肉腫」だったと言う事もあります。子宮筋腫、と診断されたら、必ず定期健診を受けることが大切です。

子宮筋腫があっても妊娠の妨げにならず、そのまま周期療法が可能な場合もありますが、筋腫の出来る場所や大きさによっては受精卵の着床障害や流産を起こす原因となる事もあるので、先に子宮筋腫の治療を優先すべき時もあります。
漢方薬治療
漢方では、子宮筋腫は「お血」とみなし、活血化お薬を中心に用いる治療をします。保険でも処方されることが多い桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、折衝飲、桃核承気湯などがよく知られていますが、血府逐お丸、冠元顆粒などの中成薬も非常に有効です。

妊娠に無関係な場合は問題ありませんが、不妊治療の一環として子宮筋腫の治療をする場合、活血薬の中には妊娠初期には服用してはいけないものがあり、注意が必要です。

出血過多の場合は、田七人参やキュウ帰膠艾湯など止血作用のあるものを、貧血が見られる時は、当帰養血精、参茸補血丸などで補血をするなど、全身の状態に応じてお薬を選びます。

漢方薬で筋腫自体をなくす事は不可能ですが、局所のうっ血を取ることや筋腫に伴う様々な症状の軽減など、維持的な意味では非常に有効な治療です。妊娠を望む場合、また年齢やライフスタイルなどから妊娠を希望しないが、手術をせずに維持したい場合などにはぜひ検討してみてください。


・排卵異常
ホルモンの分泌異常などで、排卵が起こらないものです。
排卵が数ヶ月に1回しかないものを稀発排卵、全く排卵が起こらないものを無排卵と言います。
視床下部‐脳下垂体‐卵巣系の機能低下、また乳腺刺激ホルモンである「プロラクチン」の分泌過多(高プロラクチン血症)による排卵障害の場合もあります。
婦人科での検査結果と基礎体温表、普段の体質を参考にしながら、ホルモン分泌や体質の偏りを改善するように漢方薬を用います。

婦人科では、排卵誘発剤(クロミッドなど)を用いて排卵を促す方法がよく使われます。
ただ、クロミッドには排卵時に分泌される良質のおりもの(子宮頚官粘液)が少なくなるなど、受精の妨げになるような副作用があることが分かっており、その副作用防止のために、また排卵後の黄体期(高温期)の状態を良好に保つためや、良質の卵子を作るためにも、漢方薬による治療、特に周期療法が有用です。
漢方薬治療
高プロラクチン血症の場合、周期療法に加えて麦芽の炒ったものを継続服用することで改善が見られる場合があります。

・卵管障害
排卵した卵子は卵管を通じて子宮まで運ばれます。卵子は卵管の途中で精子と出会い、受精卵となって子宮まで運ばれ内膜に着床、妊娠が成立します。

卵管が閉塞して、卵子が子宮内部まで到達できないものを、卵管通過障害と言います。軽症の場合では、卵管造影検査自体が卵管の通過を良くすることが知られており、検査の後しばらくは、妊娠が成立しやすくなるようです。

排卵した卵子は卵管の先端の卵管采と言う部分が受け取るのですが、卵管采が変形していたり、周囲との癒着があるとうまく卵子を受け取ることができません。これをピックアップ障害と呼びます。

何らかの感染が原因で炎症を起こしている場合には、抗生物質や抗菌剤などにより治療をする場合があります。
それ以外の場合では、症状の程度等に応じて通水、手術、人工授精などを行います。
漢方薬治療
漢方薬では、理気薬や活血化お薬が卵管の通りを改善するのに用いられます。周期療法に理気・活血薬を強化した形でお薬を選びます。
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