疾患の解説と漢方薬>便秘

便秘

便秘には大きく分けて3つのタイプがあります。
 1.直腸性便秘 2.弛緩性便秘 3.けいれん性便秘
多くの方は、どのタイプかを気にすることなく、一般に手に入りやすい便秘薬を服用されています。
さほど問題がない場合もありますが、お薬が合わないと腹痛を起こしたり、ひどい下痢を起こすことがあります。
また、慢性的に服用することでお薬に耐性ができてしまい、徐々に服用量を増やさないと効果が現れなくなることもあります。
そして、実際には上記の3つのタイプが複雑に絡み合っていたり、生活習慣の様々な要因が影響を及ぼしているものです。
長年の便秘でも、体質や生活習慣を見極め、体に合ったお薬や健康食品をうまく用いて排便をコントロールすることで、徐々に体質改善することができます。

1.便意がうすい 直腸性便秘

通常は便が直腸にくると反射的に肛門括約筋がゆるんで排便がうながされますが、このとき意識的に排便させないでおくとそのまま便は残ってしまいます。習慣的に排便を我慢しているうちに、排便反射がにぶくなり、直腸に便がたまっているにも関わらずぜん動運動が起きないタイプの便秘症を、直腸性便秘と呼びます。
忙しくてトイレに行けないとか、外出先で排便を我慢してしまう方に多く見られます。
また、下剤や浣腸の乱用が原因の便秘はこのタイプです。

漢方薬

桃核承気湯、防風通聖散、潤腸丸、麻子仁丸、大甘丸などを、量を加減しながら用います。

生活面

朝食をしっかり摂る。
繊維質や水分を積極的に摂る。
ヨーグルトなどの乳酸菌食品を取り入れる。
朝、時間にゆとりをもつ。
便意を感じたらとりあえずトイレに行く。

とにかく、直腸に便がたまっていることを自覚できるようにならないといけません。
そのためには、毎日排便して、直腸がからっぽになることを習慣づけ、便がたまったら不快に思うことが大事です。
下剤を習慣的に用いるのが体に悪いと思って、我慢できなくなったときだけ下剤を飲むのではなく、体に合うお薬を選び、心地よい硬さ・量のお通じがつく量を加減して、毎日服用しましょう。その間、生活面にも気を配ります。
毎日の排便が習慣付いたら、少しずつお薬の服用量を減らしていきます。

2.腸が弱くゆるい・弛緩性便秘

大腸が長く拡張していて緊張がゆるんでおり、便を送り出す力が弱いために便秘になっているもので、寝たきりの病人や老人に多く見られます。
便意がとぼしく、便は硬く太いことが多いです。
腸が弛緩しているだけでなく、便意をあまり感じない直腸性便秘の要因も併せ持っていることが多いようです。

漢方薬

補中益気湯で、腸本来の力を取り戻させる治療をベースとします。
それだけでは、すぐに排便がつかない場合は、量を加減して下剤成分の入ったお薬を併用します。

生活面

適度な運動をして、体力、腸の力をつける。
繊維質の多い食事を摂る。
体力がなく、気力の乏しい方は胃腸を冷やすと余計に胃腸を弱めます。生野菜や生もの、冷たい食品の摂取は控えましょう。

3.キリキリタイプ・けいれん性便秘

精神的ストレス、多忙、自律神経のアンバランスなどが原因でおこる便秘。
副交感神経の緊張により、大腸壁の筋肉が過剰に収縮して腸管が狭くなり、便がスムーズに移動できなくなって止まってしまうものです。
おなかの左側にある下行結腸からS状結腸で便が滞り、便は硬く、コロコロになることもあります。また、排便後の爽快感がなかったり、残便感がします。
過敏性大腸症の便秘にはこのタイプがよくみられます。

漢方薬

このタイプの便秘の解消には、自律神経の過緊張をほぐし、腸管の収縮をゆるめるお薬が必要です。
桂枝加芍薬湯、加味逍遥散、四逆散など。

生活面

リラックス・リフレッシュが必要です。
時間にゆとりを持ち、気分転換が出来るようにしてみましょう。
冷えや寒さが悪化させることがありますので、冷たいものの摂取を控え、体(特に下半身・足先)を冷やさないようにします。